どこにいても家族とつながる
スキップフロアの家
豊橋スタジオ主催のイベントに参加し、建築家の柏木穗波さんと意気投合して入会を決め、最初に行ったのは土地探しだった。しかし、I様が望むような『景色のいいところ』がなかなか見つからず困り果てていた時、たまたま散歩で通りかかった遊歩道沿いに空き家を発見。すぐに豊橋スタジオに連絡して所有者を探し、交渉の末にようやく土地を手に入れることができた。
そしていよいよ設計プランの相談へ。ご夫妻が希望したのはフロアに半階ずつ高低差をつけるスキップフロアの家だった。
『イベントフロアで拝見した柏木先生の作品でもスキップフロアの家を見かけて空間を無駄なく使えて良いなあと思ったんです。他にも窓からの景色を活かしたいとか、限られた面積でも広く感じられる方が良い、ワークスペースがほしいなど、希望をお伝えしました』
と、ご主人。
土地探しに時間がかかったが、設計も工事も滞りなく進み、入会から約2年半後に待望の家が完成した。 間取りは、1階に主寝室ウォークインクローゼット、階段を6段上がるとワークスペースやバスルームなどがある。スキップフロアの特性を活かした各階が緩やかに繋がる間取りだ。
『私が2階のリビングにいても子供が中2階で遊んでいる様子を見ることができます。姿が見えなくても空間が繋がっているので、どこにいても家族の気配が感じられて安心しますね』
と、奥様。
中2階の下に広々とした床下収納を設けているのもスキップフロアならでは。ウォークインクローゼット内に入り口を設置し、クリスマスツリーやキャンプ道具、旅行用トランクスといった大きなものであっても、たっぷりと収納できるので便利だ。
機能的な面だけではなくこの家には心地よく過ごせるアイデアが詰まっている。例えば、壁の色。白を基調として、子供部屋は芥子色、階段は墨色仕切り壁は淡いグレーなど、アクセントとして数色使用することで空間に奥行きや陰影を生み出している。
また、硬質なステンレスのキッチンをタモの面材で包み込み、同じ面材をリビングの壁に施すとともにテレビ台を造作したことでインテリアにさらなる統一感をもたらした。
『仕事で疲れていても家に帰ってくると心が安らぎます。景色がいいので窓から外を眺めることが増えました。あとワークスペースはすごく気に入っています。持ち帰った仕事を片付ける時に使えますし、子供が宿題をするにもちょうどいいですね。』
と、ご主人様。
『木のあたたかな感じと、グレーを活かしたスタイリッシュな感じの、両方ともバランスの取れたインテリアが好きです。ベランダから遊歩道の桜並木が見えるので、花が咲いたら家族みんなでお花見をしようと思っています。』
と、奥様は春が来るのが待ち遠しそうな様子だ。
各部屋がゆるやかにつながるだけでなく、リビングの大きな窓により空や遊歩道の自然ともつながっている。コンパクトながら、お子様たちの健やかな成長を予感させるような、伸びやかに広がりが感じられるような家だ。
(取材 / 吉田桂)
【夢見草(さくら)の家】
主要用途| 専用住宅
家族構成| 夫婦+子供2人
構造・構法・規模| 木造
地上2階
建築面積 53.68m2
延床面積 97.65m2
撮影|上田宏
設計建築家|
柏木学・柏木穂波/
有限会社カシワギ・スイ・アソシエイツ一級建築士事務所